「炬燵夢想」

僕はパソコンを持っている。持っているだけではなくちゃんと使って
いる。決して使いこなせている訳ではないけれど。
昔から自分のことを知っている方は、柄でもないと思うだろうけれど、
僕だって大人にならなければいけないんだもの。
初めの内はヤフージャパンのホームペイジを開くだけでドキドキして
いたけど、今ではこうして原稿を書いて風間とメールでやりとり出来
る迄になった。我ながら立派なものである。これと同様にドラムの腕
前も上達しないものかしら。

元clismsの樋口君から譲り受けたパーソナルコンピューターには、ビ
ートルズからヴァンパイアウィークエンドまで様々な音源がデータで
残っており、ボタン一つで僕の部屋は忽ち名曲ライブラリーに変貌す
る。おかげで今年の冬、やりたいことが一つ増えた。まず、朝起きて
顔を洗って掃除洗濯など、身の回りを丁寧に整理整頓する。丁度お昼
前辺りからベランダに冷やしてあった瓶ビール片手に温々とコタツに
入ってから、、、一杯始める。

アテは、お茶漬けにタラコとチリメンといった所だ。ビューティフル。
さらに、名曲ライブラリーボタンをポチッと押せば。マーベラス!!
友達でも呼ぼうかな。但し、相手が居る場合はなるべくゆっくり飲ま
なければならない。こないだも近所に住んでいる牛尾を家に誘った際、
久しぶりの来客でテンションもあがり、ワインをがぶ飲みした挙げ句
に、何でもない3コードのガレージロックを聴かせてクダを捲くとい
う醜態を晒してしまった。そんな事もあるので矢っ張り一人でやらな
ければならない。

段々と酔いが回り気分が良くなってくれば、次第に取り留めもないこ
とが浮かんでくるだろう。このライブラリーに入ってる蒼々たるバン
ドでワールドカップを開催したらどうなるのか。「バンド無双」とで
も呼ぼうか、ビートルズを頂点とする、天高くそびえ立つトーナメン
トで自分はどこまでいけるのだろうか?最終予選の相手はクラッシュ、
フェラクティ、ドアーズ、YMOにクイーン。ん〜。

厳しすぎる戦いだ。万が一、万が一(酒の力で)予選を突破する事が
出来たとしても、傷だらけでボロボロ、満身創痍の僕をベスト8で待
ち受けているのは他でもない、あのレッドツェッペリンなのだから。
ああ、ボンゾのバスドラが五臓六腑をエグり、ペイジのチョーキング
で骨の髄が軋む。皮膚は爛れ、血は枯れ、骨が溶けていく。景色が灰
になっていく、もはや風まで死に尽くしてしまったのだろうか、辺り
は異様な静けさに包まれた。ふと気が付けば、眼前に一筋の光が段々
になって、天空へと続いている。
「こ、こ、これがあの天国への階段ってやつだな」・・・・


いい加減酔いもピークを迎え、炬燵夢想するのにも飽きてきたので
ベランダに出て、「もういくつ寝るとお正月」を歌う。すこぶる機嫌
が良い。外はやけに静かで、空気も透き通っている。隣の家の屋根に
は、うっすら雪が積もっている。一方部屋の中、名曲ライブラリーの
ステレオからは、ビートルズの「IN MY LIFE]がこぼれている。
小さな小さなボリュームで。