「KAH-HUN」

拝啓、花粉様。

あなたには、物心が着いた頃から、大変お世話になっております。
別れの季節3月になるとやってきては、ちょうど新学期が始まり、
新たな友と出会う迄の、一ヶ月と半月程、私の寂しさを紛らわそ
うと、わざわざ風に乗って、山里離れたこの街まで、会いに来て
くれているのですね。本来ならば、面と向かって「ありがとう」
と感謝の気持ちを述べたいのですが、ついつい、私の方で感極ま
ってしまい、とてもじゃないけど、涙と鼻水とで、まともな状態
でいられなくなってしまうので、こうして、手紙を書く事にしま
した。

もうじき桜の花が咲きます。世間は花見だ、と盛り上がりますが、
私は乗り気にはなれません。どうしても花びらより、あなたの事
が気になってしまうのです。あなたの事を思うと、涙が溢れ出し、
鼻水がとまらなくなり、酒の注がれたコップ片手にじゃれ合う皆
のように、笑顔でいられません。でもそんな顔、とてもじゃない
けどあなたに見せられたもんじゃないでしょ。あなたに嫌われた
くないからマスクで顔を隠したりもするのですよ。

三月になり、朝のニュースであなたが話題なると、今年もやって
くるんだなあとドキドキします。こう見えても、私はあなたのこ
とを毎日テェックしているんですよ。最近、頭がぼーっとして、
何をするにも、集中できなくなりました。これが恋煩いというや
つでしょうか。今日も医者に行って薬をもらってきました。恋の
病に一日一錠、二週間分です。